ある海岸の近くに一人の漁師が住んでいました。男の名前はうらしま太郎と言いました。男は正義感が強くとても親切なため、その漁村では人気者でした。悩みを抱えた人間が毎日のようにうらしまの元を訪れ相談していきました。勿論彼には奥さんがいました。田舎の漁村にはめずらしいほどの美人で器量もよく、二人は村人からとても好かれていました。
ある日うらしまが海岸沿いを歩いていると亀が子供たちにいじめられていました。それを見たうらしまはすかさず止めに入りました。「こらこら君たち、亀をいじめてはいけないよ」子供たちは悪さを見付かったためうつむきました。うらしまが人並みに説教をしたあと、子供たちは帰っていきました。子供たちが帰るとうらしまは亀を海に放そうとしました。「悪いのう、助けてもらって」と亀が言いました。「かかか亀がしゃべった!?」うらしまはぼうぜんとしました。「何も驚くことはない。わしは普通の亀とは違う」と亀が言いました。「かかか亀が日本語をしゃべった!?」うらしまはぼうぜんとしました。「わしは地球外生命体じゃ。地球上で言う亀の形をしている・・って、ちょっと待て」頭が痛くなったうらしまは家に帰ろうとしていました。「亀が・・・亀が・・・」うらしまは崩壊し始めました。「何も不思議なことはない。地球の科学が発達していないだけじゃ」「そうか!」うらしまは突然叫びました。「これは夢なんだ!」「違う!夢ではない。まあ、とにかく儂の話を聞け」これは夢だと信じ切ったうらしまは素早く環境に順応しました。「で、なんだい?」「わしは助けてもらったお礼が言いたかったのじゃ。しかし命を助けてもらったのにお礼だけでは悪い。我が宇宙船に招待しよう」「宇宙船!?」うらしまは亀に訪ねました。「地上に置いておくと目立つからのう・・・今は海の中に隠してあるんじゃ」と亀は言いました。「じゃあどうやって行くんだい?」亀は甲羅の中から銀色に輝く着物を取り出しました。「これを着れば海の中でも呼吸が出来る」そんな事を言われて素直に信じる人はいませんが、これは夢だと思っているうらしまは素直にそれに従いました。着物を着終わると亀は言いました。「儂の背中に乗りなさい」うらしまが亀の甲羅にまたがると亀は海の中に入っていきました。 海の中をしばらく行くとなにやら亀の形をしたような物が見えてきました。「あれがわしらの宇宙船ARN112、通称RYUGUじゃ」 宇宙船の中に入ったうらしまはさらに驚きました。鯛やカレイなどといった魚を顔に持つ生命体がそこらじゅうを歩いていました。「何も驚くことはない。地球人が宇宙の中で唯一の生命体というわけでもない。我々がたまたま地球で言う魚と遺伝子情報が似ているからな・・・」そんな事を言われてもうらしまにはなんの事やらさっぱりわかりません「我々の女王にあっていただこう」そう言って亀はどんどん奥に進んでいきました。 「女王様、お連れしました」扉が自動的に開き部屋の中には女性が立っていました。しかし女性は人間の形をしていました。そんな疑問が顔に出たのか、女王はうらしまを見て言いました。「彼を助けてくれてありがとうございます。普段はあなた方の言う魚の形をしていますが今日は人間の姿にさせていただきました」こちらに安心感を与えるためのものだと亀が言いました。「これなら普通に話せるだろう?」
宇宙船の中で亀を助けたお礼として盛大な宴会が開かれました。あまりの楽しさにうらしまは時がたつのも忘れ楽しみました。宇宙船に来てから丁度一日がたったときに女王が話しかけてきました。「うらしま様、お楽しみのところを悪いのですが私たちはそろそろ自分たちの星に帰ろうと思います」「えっ?それでは私も帰らなくてはなりませんね」惜しいようにうらしまは言いました。「いえ私たちの宇宙船の中に物質移動装置という物がありまして、うらしま様がいつでもご自宅の方に帰れるようになっていますが・・・」うらしまは少し考えました。今すぐ帰ってまた漁をするよりも、ここで楽しんでいたい。まだ一日しかたっていないし、いつでも帰ることが出来るならばすぐに帰らなくてもいい。「いつでも帰れるのならもう少しここにいてもいいですか?」女王は言いました。「ええ、うらしま様が望むなら・・・」 毎日毎日遊ぶのにも飽き、うらしまは帰ることにしました。「お世話になりました」女王は言いました。「これはおみやげだと思ってください。それと小さい箱の方は絶望したときに開けてください」大きい箱の方を見ると、中には見たこともないものが沢山入っていました。「本当にお世話になりました」そう言ってうらしまは帰っていきました。 うらしまは海岸に立っていました。あたりを見回すと、どうやらうらしまの家から近くの海岸のようでした。妻が心配していると思いうらしまは急いで家に帰りました。しかしうらしまの家のあった場所には何もありませんでした。どういうことだ、そう思いうらしまは仲のいい友人の家に行きました。しかし家の中には友人ではなく別の人間が住んでいました。おかしいと思ったうらしまは家の人に聞きました。「ここに住んでいるのはあなたたちですか?」不思議そうな顔をして住人は答えました。「そうですけど・・・」この家はたご作という男が住んでいたはずでした。そこでうらしまは聞きました。「ここに住んでいたたご作と言う人は・・・」「ああおじいちゃんですか?おじいちゃんは10年ほど前に死んでしまいましたよ」混乱したうらしまは今はいつなのか聞きました。返ってきた答えはどうやらうらしまが生活していたときからおよそ50年ほどたっていました。絶望したうらしまは海岸に行きました。「妻もいない、友人もいない、ならばこんな物・・・」そう言って女王からもらった宝物を捨てようと思いました。そこでうらしまは女王の言葉を思い出しました。「絶望したときにこの小さな箱を開けてください」うらしまは女王の言う通りに小さな箱を開けました。すると中から煙が出てきて、うらしまは老人になってしまいました。老人になったうらしまはしばらくの間、生まれ故郷で生活していましたが老衰のためまもなく死んでしまいました。うらしまが死んだ後、うらしまの死体は鶴に変わり空に羽ばたいていったとのことです。
posted by Cotton at 01:59
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