2004年04月04日

盆栽

少し前に、盆栽(ぼんさい)を見に行くことになった。
盆栽というものを多分になめていた私は、その奥深さに舌を巻くことになった。

芸術というと、想起するのは音楽、文学、絵画、彫刻、建築、インダストリアルデザイン、パフォーミングアートが思い浮かぶが、しかし盆栽というのは思いついたことがなかった。ガーデニングに近い領域なのだろうか。ある種の庭園芸術なのだろうか。





ある水準を超えた全ての表現に共通するものであるが、圧倒的な表現はどのような種類の表現であっても人を感動させる。



一言で言うと、


「うつくしい。」






 実はこれらは台湾だったりするのだが、日本で見たことのある盆栽とは次元が違っていた。それは自分が優れた盆栽を見たことがないのにもかかわらず、海外であれレベルの高い展示会に行ったために感じたことなのかも知れないが、しかしどう考えても、この一鉢一鉢を創り出すのには、気の遠くなるような年月が必要とされるのは間違いない。






 昔、石を流水で削って彫刻する人がいたが、それにも近いのかもしれない。矯正芸術というのだろうか、人工の自然を創り出すこの芸術。自然界にはあり得ないはずの自然を人間自らの手で創り出す表現技法である。






 時に偶然の産物として現れる芸術を、人間の手で作り上げる。小さな頃から丹念に、その生物の石に関係なく、その生物が美しくなる方向へ、人が見て美しい方向へ、その生物の生を導いていく。






 その生物には自由はない。たとえ意図しない芽が育ち、それが花開こうとしていたとしても、それは切り捨てられる運命にある。あるひとつの型、それにむかって矯正されていくのである。





 無論、最終形は創作者にも分かっていない場合もあるのかも知れない。自分がその対象物にもたらすアクションと、その結果の相互作用が、最終的なその作品の姿を創り出していくのかも知れない。しかし間違いなく、この対象物は人間が美しいと思う方向に創り出されていく。



 人間は「美しいもの。」というものを自分で、自分のために創り出すことが出来る生物なのである。




 その美しさにはかなりの違和感がある。その美しさは次元の違う何かを感じさせるが、しかしそこには、自然を矯正することは違和感が確かにあるのである。むろんそこに違和感を感じるのであれば、訓練に訓練を重ね、トレーナーもしくは両親に作り上げられていくスーパースターにも、我々は違和感を感じなくてはならないのかも知れない。

 アスリートや芸術家、特に幼少から両親に育て上げられていく超高度な芸術家達と、盆栽の間には少し共通点があるのである。どちらの場合も、ある種の目標に向かって、不自然なほどの努力が行われる。そして時にそれは自然では到達出来ないのではないかと思えるほどの次元に、たどり着く。




 それは自分で選択した努力であることもあるが、しかし見えない鎖によって矯正された結果であることが多い。その芸術に至る過程で、多くの意図せざる芽は摘まれる運命にある。ほかの方向への興味や関心は、剪定ばさみによって切り取られる。より美しい形へと自然の姿は日々矯正されていくのである。

非の打ち所のない姿は、不気味でもある。完璧というものほど畏怖を覚えるものはない。
到達があり得ないほど難しい高みであればあるほど、その高見に到達したものは不自然でもある。
ありえないほどの美しさは、いつも不自然を内包する。逆に不自然であるからこそ、それは美しいといえるのかもしれない。

一般と違うという意味で捉えれば、美しさと醜さは紙一重でもある。
その不自然さは、圧倒的に美しいが故に、見方を変えれば見難くもある。

しかし、たしかに自然では到達の出来ない「美」がそこにある。我々の求める「美」を体現したものが、そこにいる。あらゆる形の「うつくしさ」に共通する要素を盆栽もやはり内包している。
posted by Cotton at 00:52 | Comment(1) | TrackBack(0) | 随想(essay) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
東京の八芳園で日本の盆栽も見ました。日本のものはなかなかベーシックなものが多いです。どちらかというと繊細な印象を受けました。力強い印象が強かった台湾の盆栽とはこれまたちがったものでした。樹齢何百年もの歳月が経過しているのにもかかわらず、両手で抱えることの出来る盆栽。権力者や引退した人がこれらを好むのもこの永久の歳月がもたらす魅力なのかも知れません。
Posted by cotton at 2004年06月20日 03:16
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