2008年11月07日

U.S. Election. What has changed and what has not changed:米国大統領選挙に見る変わらないアメリカ。変わるアメリカ


(English version will be published soon)

 アメリカ大統領選挙が終わった。様々な感想が流れているが、自分は「古くからあるアメリカが変化をもたらしたのではなく、新しいアメリカが変化をもたらした」という点を強調したい。
 依然として「黒人」に対する古くからあるアメリカ社会の反応は鈍く、風穴はやはり風穴であって、未だに人種に対する拒否反応は根強く残っているように見えるという点だ。
 

 下の写真を見てほしい。これは米国大統領選挙の日本で言うと市町村別の勝敗だ。

:

資料:NewYork Times Election Results (2008)


 今回、オバマ候補は364票、マケイン候補は162票(12票は現在未確定)を獲得し、大差で次期合衆国大統領に決定している。
 しかし、興味深い事に、この地図の赤色の部分は共和党、すなわちマケイン候補が勝利した地域であり、青色の部分がオバマ候補が勝利した地域なのである。都市部を除けば、マケイン候補はアメリカ合衆国の大部分で15%以上の差をつけてオバマ氏に大勝している。

 この地図だけをみて、どちらが勝ったかを直感的に見るのは専門家でなければ難しい。


 比較として、クリントン大統領が当選した1992年と1996年の選挙を見てみよう。どちらも基本的にクリントン大統領の大勝である。1992年はクリントン氏370票に対し、ブッシュ父が168票。1996年はクリントン氏379票に対してロバートドール氏159票。どちらも今回のオバマ氏とマケイン氏の戦いと同じ程度の差をつけて勝利をしているケースと言える。


1992年アメリカ大統領選挙





1996年アメリカ大統領選挙結果




 どうだろうか。民主党が勝利しているというのが目で理解出来ると思う。少なくとも今回のケースより遥かに分かりやすい。オバマ氏はクリントン氏と同様に結果として大勝を果たしているが、その内訳は大きく異なる。オバマ氏は古き良き、アメリカにおいては全く勝利出来ていない。むしろ、大敗しているのだ。同じ民主党の勝利であっても、クリントン氏の勝利と、オバマ氏の勝利はまったく質が異なる。

 ではなぜ勝てたのか。詳細な分析は専門家にゆずるが、もちろん、都市部の若者を中心としたリベラルな層と、増え続けるいわゆる「有色人種」からの圧倒的な支持である。クリントン氏も都市部の若者を中心としたリベラル層から大きな支持を受けたが、オバマ氏はそれに併せて、もう一つの強い力の強力な援助を得ていた。
 アメリカ人はもはや昔のアメリカ人ではない。移民政策の継続により、アメリカはもはや「白人」のアメリカではない。「白人」と呼べるのは人口の65%程度に過ぎない。
 例えば、ヒスパニックは人口4400万人、人口の15%を占め、アフリカ系は14%、アジア系4%、その他の人種例えばオバマ氏のような混血の人が12%を占めているのが現状だ。これらの非白人人口はものすごいペースで拡大しており、ヒスパニックの人口がこのまま増え続ければ、2050年には人口の50%を占めるという推計もある。彼らの支持は、勝負を決める。

 今回の選挙の人種別の出口調査結果を見てみよう。

アメリカ大統領選挙人種別投票結果



 何が勝負を決めたか、それは人口の33%を占める黒人、ヒスパニック、アジア系からの圧倒的な支持である。オバマ氏は都市部に強いのではなく、都市部にしか住めない貧困層に圧倒的に強いのである。オバマ氏は古くからのアメリカ人の強い抵抗にあいながらも、新しいアメリカ人の圧倒的な支持を集め、当選した。
 もちろん、古くからのアメリカ人も変わり始めている。人種差別に反対するリベラルな層は増え続けているし、大学教育や職場での人種の混ざり合いが少しづつ変化をもたらしている事も同意出来る。しかし、その変化の風穴を空けたのは、彼ら自身ではなく、新しい力であった。
 オバマ氏は知性を兼ね備えた大変素晴らしい人格者であり、尊敬に値する次世代のリーダーである。しかし、それだけでは勝利を収めることは出来なかっただろう。


 50年後のアメリカはどのような姿になっているのだろうか。圧倒的に増え続けるヒスパニック人口は企業のマーケティングにも大きな影響を与えている。もはやスペイン語がなくては勝負にならない。大学や大学院にいけばアジア系があふれている。それは生徒だけではなく、教授陣を見ても分かる。
 アメリカはイタリアや日本の様に減り続けた可能性のある労働人口を移民によって成長させてきた。1990年に2億5千万人だった人口は、わずか20年で3億人に到達する。アメリカは低下する科学技術力を移民によって支えてきた。アメリカの職場に行けば、驚くほどの人種の多様性を目にすることができる。
 このまま進めば、私が生きているうちに「白人」はマイノリティになる。この国の過半数はこれまでマイノリティであった人々によって代表され、これまで「自分の国」だと思っていた古くからのアメリカ人が、「自分たちの国」を意識せざるを得なくなる。
 私の捉えたアメリカの変化は、移り変わる「アメリカ人」の定義の変化であった。政策面での違いなど、他の様々な要素も大きな影響を与えたが、この少しづつ、大変な規模で進んでいる「アメリカ人」の変化は、これから先アメリカという国の政治に大きな影響を与えるだろう。

 オバマは風穴を空けた。これはアメリカという国を構成する人々の変化の序曲といえる。


 
ちなみに蛇足だが、、、さらに興味深いのは以下のデータだ。

アメリカ大統領選挙男女別投票結果




オバマは女性の56%の票を得ているのに対して、マケインは43%しか得る事が出来ていない。あの副大統領候補がいなければ、変化は起こらなかったのかもしれない。(笑)

posted by Cotton at 07:29 | Comment(1) | TrackBack(0) | 政治と経済(Politics&Economy) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
■アメリカの歴史的選択 次期大統領にオバマ氏−時代のキーワードは「金融・経済」から「社会」へ
こんにちは。大方の人の予想通りオバマ氏が大統領になることが決まりました。オバマ氏、ここ当面は金融危機打開策を打つことになると思います。ただし、しばらくして金融システムがおちついてくれば、おそらくブッシュ政権のときにズタズタにされたアメリカ社会の修復に取り組むものとみられます。そのため、ブッシュの頃に比較すると大きな政府を目指すと思いますが、いわゆる福祉国家にかえり咲くことはないと思います。いずれにせよ、ここしばらくアメリカというより、世界の先進国では日本を含めて「金融・経済」がキーワードになっていましたが、アメリカからはじまりいずれ他の先進国でも時代のキーワードが「社会」にシフトしていくと思います。健全な社会ができなければ、実体経済も金融システムもまともなものにはならないからです。詳細は是非私のブログをご覧になってください。
Posted by yutakarlson at 2008年11月07日 11:47
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