さて、前回のクルージングに引き続いて今回はRYA(英国王立ヨット協会)認定のヨットマスター(RYA/MCA Yachtmaster Offshore) 取得に向けたトレーニング合宿に参加した。と書いていると、自分は一体経営学を勉強しにきているのか、ヨットを学びに来ているのかさっぱり解らなくなってくるが、何はともあれ自分の記憶のためにもこれからイギリスでセーリングボートのライセンス取得に取り組まれる人のためにも記録を残しておこうと思う。
このRYA資格、さりげなくイギリス海洋帝国を象徴する資格だ。
実は、ヨット、または小型船舶には国際的な免許の相互認証の協定は無く、日本の小型船舶一級免許を持っていようが外国籍のボートには役に立たない。その国の免許制度に準拠したライセンスが必要になる。
実は、イギリスには、恐らく米国にも日本のような国土交通省が認定するような免許は無い。もし自分でヨットを買えるお金があるなら基本的に何の免許も資格も無く乗り回す事が可能だ。
しかし、問題なのはヨットを(特に海外で)レンタル(チャーター)するときだ。そうはいっても全く経験のない人にいきなり10m以上もあるようなボートを貸す事はちょっと難しい。
そこで、各国の免許にかわってRYAのライセンス(というかCertificate)はかなりの力を持つ様になる。英国、オーストラリア、ニュージーランド、そしておそらくカナダというセーリング大国を押さえている資格であるため、ほとんど全世界のセーリング地域で通用する。すなわち、これさえ見せれば、ほとんどどのチャーターカンパニーもヨットを貸してくれるという状況になる。
これにもいくつかカテゴリーがあり、また講習を受ければ取れるものと、試験を受けなくては取れないものの二種類が有る。試験を受けなければならないものは
あ)RYA/MCA Coastal Skipperの三種類が有り、それぞれ受験資格と、それを基にどのぐらいのレベルに達しているかの違いが有る。(多少例外や軽減処置も有るので詳しくはRYAのサイトを参照)
い)RYA/MCA Yachtmaster Offshore
う)RYA/MCA Yachtmaster Ocean
あ)は救急講習修了証とVHF無線免許、30日以上のセーリング経験、800マイルの航行、2日以上の船長、12時間以上の夜間航行
い)は、あ)に足して50日以上のセーリング経験、2500マイルの航行、5回以上の60マイル以上の航行(2回以上のオーバーナイトと船長含む)
う)は、い)に足して外洋航海経験と外洋航海講習が必要。
実際の所 あ)が取れれば海外でレンタルするには問題が無いが、今回はい)の取得に向けたトレーニングに参加した。大変残念なのは、イギリスでの航海経験が足りない&VHF無線免許と救急講習修了証が無いため自分は受験出来なかったことなのだが、将来の取得に向け、大変よい経験が出来た。
実際、自分は日本の小型船舶一級免許を持っているが、それとこちらの免許のもっとも大きな違いは実技に有ると思う。基本的に座学(海上法規、気象、航海計画)はほとんどレベルに違いは無いので、日本の免許を持っている人は安心していいのだが、こちらはセーリング(帆走)の状態での落伍者救助やアンカリングの訓練などが加わり、また夜間の航海も実技に含まれる。
試験は自分のボートやレンタルボートを使って行い、一人の候補者の場合は6時間から10時間、二人の場合は8時間から14時間の試験が行われる。実際の海上で安全に留意しつつ自船の位置を計測し、方位を取り、目的地に到達出来るか。船長としてクルーメンバーを統率し適切な帆の状態を保ちつつ航海出来るかが問われる。
今回試験を受けたのは大学で研究員をやっているジョンというハンガリー人、チームメイトは自分と大学の博士課程のヘンリーという恐らくドイツ系イギリス人、もう一人は大学の学部生のユゥファンという香港から来たアジア系イギリス人(??)だ。ここに試験監督のナイツブリッジが加わり試験が行われることになる。
この人がジョン
実は今回は風が結構強く、レベル7から8、時には9に近付く事もあった。風速25−30ノットがコンスタントに続き、場合によっては38に近付く突風も吹いた。そのためヘッドセール(ジブセール)は1/3程度にして、メインセールはリーフ3でかなり小さくしていたのだがそれでも5から6ノットで航行することが出来た。写真やらビデオにするとこんな感じ(後半から風速が強くなってくる。。)
水平線を見るとヨットが傾いているのが解るかと。
風が強いので運転する際はこんな感じで斜め30度から40度くらいになる。
最初はautopilotでほのぼの運転。後半からちょっと強風時のヨット。
今回は、こういう風にちょっと荒れたコンディションで船の限界を知ると同時に、トレーニングも接岸、離岸から下の写真に有るような黄色いブイをキャッチして停船するトレーニングなど色々楽しむことが出来た。
白いブイでは取り回しの練習。
航路標識などを使ったナビゲーションも重要。
実際、船は危険な乗り物で、色々な経験をしなくては本当に楽しむことは出来ないと思う。日本は比較的自由に船に乗る事が出来るが、あまりこういう教育インフラは充実していない。恐らくベテランの船乗りからの口頭伝授がほとんどだろう。その点イギリスはこういったカリキュラムが充実しており、またインフラも大変整っている。
どの港に行ってもヨットは大歓迎の様子だし、たくさんのハーバーにたくさんのヨットが有る。ハーバーにはヨット用品の専門店が並び、ヨット専門のブローカーがたくさん並んでいる。実際日本ではヨットをレンタルすることすら困難なのに、こちらでは大量にそういった業者が存在しており、これほど整っているセーリングの環境はそれほどないだろう。
まぁ、こういったこともさておき、今回もすばらしいセーリングを満喫出来た。長くなってきたので今回は是くらいにして、次回はオックスフォード代表のセカンド艇のクルーとして参戦したトレーニングウィークの模様をお伝えしたい。。。
って、真剣に自分はセーリング留学をしにきたような気分になってきた(滝汗)
p.s. もうちょっと写真。
イギリスのヨットの旗(色々種類が有る。さすが階級社会。。)
もうすぐ日が沈む。
しかし、、GPSやらautopilotやら便利すぎる。。
続く。。。
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nice!!
I think the US had this kind of license and let all of my family go to sailing.
I wish I can get license some day.