さて、時はさかのぼる事二週間前、今回は金曜日から日曜日まで参加したBUSA Yacht Nationals&Varsity練習レースの模様をお送りしたい。
前回と前々回お伝えした様に、私はオックスフォード大学のヨット部に所属しており、イギリスのセーリングを堪能している。もともとはただ単にリラックスなクルージングを一緒にしてくれる仲間に出会いたくて参加したのだが、恐らく日本の小型船舶一級の価値を大いに誤解してくれたチームメイトによってちょうど椅子が空いていたレーシングチームにも参加させてくれたというのが事の流れ。
かっこ良く言うとオックスフォード代表艇のクルーなのだが、実態を言うとセカンドボート(二軍)の乗組員である。しかも二軍とはいえ経験豊富なクルーに囲まれているので第三助監督ぐらいの位置づけと考えてもらって差し支えない(爆)。今回参加する事によって経験を付けてもらって、将来的に成長したら一軍選手になれる様に頑張ってねというくらいのものだ。
しかし、だからこそ学びの多い機会であり、本場のレースの醍醐味を味わうことが出来た。実際ディンギーを大学でやっている人や北京オリンピックなどでセーリングに注目していたようなヨット好きの人は知っている様に、英国はヨット大国である。今回は金メダル4個、銀メダル1個、銅メダル1個で二位のオーストラリアの金2個銀1個に大差をつけて首位であり、これまでの歴史の通算でもイギリスは金メダル25個、銀14個、銅11個とアメリカと世界一を競い合う競合である。詳しくはこちらを参照。(ちなみに日本はこれまでの歴史の中で銀1個、銅1個である。。。)
実際前回参加した英国RYAのライセンス試験監督が主張するには、イギリスはもっと代表を出すべきだと。今は一カ国から参加出来るのが限定されているからこれしかメダルが取れないが、三艇出せればメダル独占は「余裕」なのだそうだ。。。実際どうかは知らないが、しかしイギリスに在住が長い友人によるとイギリスのヨットの報道はかなり過熱気味で日本で言う柔道とかマラソンとか、そういう位置づけなのは間違いないとの事。だいぶ気合いが入っているのは間違いが無い。
今回のVarsityというのは伝統あるオックスフォードとケンブリッジの対抗戦で、ヨットの対抗戦はボートレースほどの知名度は無いが非公式にかなりの昔から続いてきた物が最近公式なVarsityとして認められたものである。BUSA Yacht NationalsというのはBritish University Sailing Associationの略で、こちらは日本語に訳すとセーリング全英大学対抗戦という感じになる。こちらもRYAとBUSA(British University Sports Association)にサポートされた大学対抗戦を運営する組織の主催する年に一回の全国大会だ。
たしか今回は24の大学から35艇が出場している(ちょっと不確か。)。強豪は三艇出場しているところもあり、またケンブリッジやオックスフォードの様に将来の選手育成をかねて2艇出場しているところもある。全部は覚えていないが、ポーツマス、プリマス、サウザンプトン、ワーウィック、ニューキャッスル、バース、エディンバラ、インペリアル、ダーハム、アバディーン、サセックス、カーディフなどなどが参加していた。
今回のトレーニングウィークはこれに参加するためのトレーニングだ。SunSailというかなり巨大なヨットチャーター会社の主催する大会に出場してそれで訓練をしようという物になる。
このSunSail、実際のBUSAでも全く同じ37フィートのボートを35艇余裕で提供出来る怪物だ。今回はSolentから出航したのだが、全く同じボートが70艇以上!!統一仕様で大量発注する事によってコストを抑えて急成長した有力会社だ。クロアチアやギリシャ、トルコなどでもレンタルが出来るこの世界では有名な会社らしい。まぁ、故障が多い事でも有名らしいのだが。。。(汗

まったく同じ37フィートが鮨詰め状態!壮観!!
今回は晴天に囲まれて大変心地の良いレースだった。風が弱いのでちょっとしたセールの調整が大きな影響をもたらすのでこれもまた大変で、ただ逆にたくさんの学びがあった。

ちなみに二日目はまったく風がなくなってしまいしばらくほのぼの。海のど真ん中でオックスフォードのニ艇を連結しているとポーツマス艇も加わってもうパーティ状態。スピーカーから音楽を流しながらゲームをしたりほのぼのしたり一体何をしているのか解らない状態。かなりのほのぼのだった。
しかし、、、その後問題発生、エンジン壊れる。。(汗)どうも冷却水が取り入れられていない。自分もエンジンに詳しいので見てみるとどうもおかしい。冷却水取り入れ口は上から水を垂らすときれいに流れていくのでクリアーなのは間違いないのだが、全然圧力が上がらない。インペラの故障を疑ったところそれがちょっと欠けていたのでこれで解決かと思ったがそれでも圧力が上がらない。そもそもこの種のエンジン多少冷却水が足りなかろうが真夏でもない寒いイギリスの春なのでエンジンルームのカバーを全部空けて超微速で進む程度なら入港ぐらいの短時間なら問題ないはずなのだが、それでぶっ壊すと大問題なので一同しばし沈黙。。。

問題のインペラと海水取り入れ口
ただ、これがそうはいっても経験豊富なクルーなので、とりあえずセールで戻るかで全員すぐさま一致。一番入りやすそうな近くの港にヘッドセール(ジブセール)のみの状態で入港した。実際、真っ暗闇になったなかをフェリーと高速艇の定期航路が二本走っている港に入るのはなかなか面白かった。海流も早いし、風も弱くなかったので一体何のトレーニングをしているのか解らなくなったりして(笑)。自分はセールのコントロールをしていたが、前回RYAのトレーニングに参加したおかげもあり、かなり良い感じに出来たと思う。実家のヨットはいつエンジンがこわれてもおかしくないので、、こういう経験をしておくとかなり安心度が増える(笑)
ちなみに、こういう状態でもあまり気にならないことのもう一つの背景にはイギリスにおけるVHF無線の普及も助けになっている。二本ではマリンVHF無線という全く普及していない規格と、全然誰も聞いていない16チャンネルなのだが、こちらではプレジャーボートの大半は16をワッチしており、またほぼ100%のマリーナが専用の回線を持っていて80とか11とか指定の無線に合わせると簡単に管制にアプローチ出来る。今回もセールだけで夜間に頻繁な定期航路が二本通っている狭い航路から入港だったが、すぐにマリーナに接岸しやすい場所をあけてもらい人を準備してもらうことが出来、周囲のボートに状況を説明出来る状況だったので脅威は全く感じなかった。日本もこれはなんとかするべきだろう。
まぁ、それはさておき、今回もよいセーリングだった。また次回は本番の模様をアップデートしたい。。えぇ、、凄惨な結果でしたが。。(汗

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