さて、しばらくセーリング生活について書いていませんでしたが、実は一ヶ月に一度はセーリングをしていたのです。前職のロンドンオフィスのセーリングイベントに参加し、RYA(王立ヨット協会)公認のセーリングコースにも参加していました。さらに、紆余曲折の末、先週末全世界で通用するイギリスのライセンスを取得してきたというかんじです。
さて、このイギリスの免許、RYA/MCA Coastal Skipper Certificate of Competence (sail)と言われる免許で、RYA(Royal Yachting Association, 王立ヨット協会)とMCA(Maritime and Coastguard Agency, イギリス海上保安庁)公認のライセンスです。(追記:現在この資格は、RYA/MCA Yachtmaster Coastalという名称に変わっています)
なんでこれを取ったかというと、旧大英帝国なニュージーランドやオーストラリアだけではなく、その取得の難しさから、全世界で通用する資格として認められているからです。もう2段階下の、講習だけで取れるRYA Day Skipper Practical Course Completion Certificate だけでも大体の国では通用する(ICCという国際免許のようなものの発行が可能)のですが、それは取れる自信があったので、今回は正式な資格であるこのRYA/MCA コスタルスキッパーのライセンスに挑戦しました。
実は、イギリスやアメリカはお金さえあって自分の船があれば免許などいらずに勝手に航海出来るのです。ただ、問題になるのは船を借りるとき。やっぱり貸す側もちゃんと運転出来る人に貸したいと思いますので、精査が入ります。もちろん保険も問題です。
そんなとき、これをもっていれば100%オッケー。なぜなら、このライセンスは商用ライセンスとしても使えて、なんとイギリスで合法的にチャータービジネスやクルージングビジネスが始められるライセンスだからです。(つまり、私が人を集めて、船を借りて、利ざやを取ってクルージングを定期的に企画しても合法)。
基準としては基本的には沿岸から30マイル、つまり100kmぐらいの海峡(例えばイギリスとフランスの間の海峡)や海流の弱い地中海で全長24m以内のヨットなら全域を安全にヨットで航海出来るというのがイメージです。理論的には、ヨーロッパから日本までヨットで行くから船を貸してくれと行っても、大体全世界の保険会社もヨット会社もイエスと言える免許です。
残念ながら日本の小型船舶一級免許はあまり認知されておらず、ケースバイケースで自分がいかに出来るかを説明しないと、いかに10年の経歴があっても貸してくれません。イギリスのこの免許はセーリング大国のイギリスを象徴する免許とも言えそうです。
試験は実は結構過酷で、今回は計3人で受験したのですが、37フィート(約11m)のヨットで試験時間は大体30時間かかりました。
今回のボート、SunSail 10
まず、まぁ恐らくこの試験を受けるほとんどのセーラーの人には問題が無い事ですが、前提条件として、過去10年以内に30日以上、800マイル以上の航海、また12時間以上の夜間航海をしており、かつ二日以上船長を経験している必要があります。また、イギリスの無線免許(RYA Maritime Short Range Certificate)と応急救護研修終了書(First Aid Certificate)が試験を受けるのに必要です。
その後に、事前課題の航海計画をこなした後、金曜日の午後に試験がスタートして、深夜の二時まで航海。次の日は朝の九時から夜の8時までぶっ通しで試験をしました(具体的なスケジュールは試験官によってまちまち)。これもただ操船出来れば良いという訳ではなくて、例えば帆だけを使ってブイに接岸したり、アンカリングしたり、落水者を救助しなくてはなりません(エンジンを使ってまず試験してそのあと帆だけを使ってトライ)。つまり、セーリングボートの運行が念頭にあるので、エンジンがない場合にも大丈夫かというのが見られます。
セーリングボートでの試験
また、空を見ているとこの後の天気はどうなるのかをいきなり聞かれます。ぼーっと運転しているといきなり試験官がキャビンから上がってきてフェンダーを海に投げ入れて落水者救助が始まったりします。さらに、霧が出てきて100mしか視界が無い事を想定して運転する事もします。そして、日没後の夜間航海も想定内です。ポーツマスやサウザンプトンという巨大港を背後に抱えているのでフェリーやタンカー、軍船がひっきりなしに出たり入ったり、結構込み合っています。また、昼間でもワイト島の海域には12万隻のヨットがありますので、イメージ的には日本全国にあるヨットの10倍の数のヨットが東京湾にひしめいているイメージです。しかし、、それでも安全に落ち着いて操船出来る船長力が求められます。
ナイトセーリングの始まり始まり。。
さらに厳しいのが、ワイト島の自然環境です。ちゃんと潮位を計算しないと簡単に座礁する海域(例、springだと5m近い潮位差があり、そこら中にサンドバンクがある)で、かつ潮流の速度が場所によっては3ノット近いので、これも念頭に航海計画を入れないとおかしなことになります。もちろん基本的な法規や航海技法(ポジションフィックスやコースtoステアの計算)は迅速に出来る必要があります。
そして、さらに恐ろしいのは試験官。三人の試験監督に会いましたが、なんと全員世界一周経験あり。しかもその内の二人は世界一週レース。一人はBossチームのメンバー、またオリンピック出場経験がある人もいました。まさにオールスター。
そんなこんなで、簡単になった後の小型船舶一級免許しかもっていない自分はかなり困難を強いられ、実は7月に一回不合格になっています。ちゃんと準備をしなかったのと、正直経験が足りていませんでした。ただ、今回ついにリベンジとなりましたので、こんな記事を書いているのですね。
この試験、日本のヨット愛好家と日本のヨット業界への示唆に富んでいます 。
まず、全体がビジネスとして素晴らしく機能しているという事。単純に誰もが試験監督になれるような試験ではなく、実際にものすごいヨット経験を積んでいないと評価出来ないような事をさせる試験を運営する事で、これ、実はヨットマンの生活の糧と作り上げています。トレーニングコースや、試験を監督しているのは無類のヨット好き達で、そのうちの何人かはきっとヨット以外では生きていくことができないような良い意味でのヨット馬鹿です。彼らの才能を一般人に広め、それを元に全体のレベルをあげていく、素晴らしい仕組みだと思います。
日本のセーラーにはこの試験を受験してみる事を強くお進めします。おそらく、もっと何十年もやっている人はもう1段階上のYacht Masterにチャレンジされる方もいらっしゃると思います。いずれにせよ、自分自身のスキルを試し、それを資格として取る事で、今後の自由度(世界の何処でもヨットが出来るという自由度)が飛躍的に上がると思います。英語はきわめて大きなチャレンジですが、極論を言うと通訳を乗船させても、それでちゃんと船の運営が出来るなら、英語の試験ではないので問題は無いそうです。
また、私のような若い世代で留学を志している船好きには、私がやったように「ヨット留学」をお進めします。まじめに勉強してみる傍ら、こういうクラブ活動や資格勉強をするのは人生の洗濯になります。特に、自分は残念ながらそうではありませんでしたが、大学や高校でディンギーレースをやっていたようなレーサーの方は、イギリスの世界での存在感をご存知だと思います。ご想像の通り、物凄く刺激的な環境で自分のスキルアップに励めると思います。
これで、地中海でも、カリブ海でも、プーケットでも、バリ島でもハワイでも、安全に航海出来る自信がつきましたし、またどこでも簡単に大型ヨットを船長抜きで借りられる様になりました。今はお金がありませんが、将来が楽しみです。
これをお読みの方で詳細がお知りになりたい方は、コメントを残されるか個人的にコンタクト下さい。さらに詳細をお伝えします。
ネット上で恐らく同種の資格を資格されたのではないかと思われる方の体験記を発見しました。リンクは下記になります。
(追記:下記の方々は恐らくRYA Costal Skipperという試験ではない講習の方を体験されたのではないかと思われます。)
タグ:ライセンス ヨット ボート RYA MCA 王立ヨット協会 英国 イギリス 海上保安庁 コースタルスキッパー コスタルスキッパー 資格 ワイト島 サウザンプトン ポーツマス 夜間航海 Coastal Skipper Coastal Skipper Certificate of Competence セーリング
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