1。どんなヨット?いくらぐらいかかるの?
いえ、そうでもないのです。スキーやスノーボード旅行と同じくらい。
今回は前職の同僚たちの希望もあり、6人には比較的大きなBavaria 40 Cruiser (2010)を一週間レンタルしました。
オーバーラッピングジェノアだがファーリングドラム付きであり、スラブリーフィングメインだがレイジージャック付きのため、メインの上げ下げもジブの出し入れも努力知らずだ。(意味のわからない人は適当に読み飛ばすこと(笑))。
横幅が広いのと、居住空間確保の為にツインホイール仕様となっており、またこのサイズにしては恐らく浅い喫水1.86mの船体(フィンキール)、セールドライブ(Volvo 30HP)、シングルラダーの構成です。
さて、このナイスなヨットで、一週間2700ユーロ。余計な心配をするために掛け捨ての保険300ユーロも加入しました。これで対人対物物損全て何が起こってもほぼ100%カバーされる状態です。合計で3000ユーロ。(例えばフェンダーを無くしても追加料金無し)
最大定員は10名とのことですが、現実的に快適に泊まれるのは6人(客室3室に二名ずつ)。すなわち、一人当たり7泊で500ユーロ。(高く感じるかも知れませんが、7泊出来ますので、一泊当たりだと約70ユーロです。)今回は7月の最終週というトップシーズンだったので、一番高い&快適な季節なのですが、それでもこの金額。オフシーズンはもっと安いのです。
概算で日本から実行した場合の一人当たりの必要経費を計算してみましょう。
一人分の7泊9日ギリシャセーリング予算(飛行機で一泊)
ヨット&宿泊代 500 ユーロ
食事代(朝 EUR5、昼 EUR15、夜 EUR20) 280ユーロ
飛行機代(東京<>アテネ (トルコ航空)) 1200ユーロ
電車代(成田<>品川 往復) 80ユーロ(?)
バス代(アテネ空港<>バスターミナル 往復)6ユーロ
バス代(アテネ<>Lefkada(ヨットを借りる港)往復)30ユーロ
ガソリン代(ヨットなのでほとんど使わないが発電機として)60ユーロ
その他呑み代など予備費 200ユーロ
横幅が広いのと、居住空間確保の為にツインホイール仕様となっており、またこのサイズにしては恐らく浅い喫水1.86mの船体(フィンキール)、セールドライブ(Volvo 30HP)、シングルラダーの構成です。
また、操縦席は天幕が付けてあり、日差しも安心、前方にもキャノピーが搭載され風が強くても快適。上陸用のゴムボート(2.5馬力の船外機付き)も完備。
内部は、船室3室及び、シャワー兼トイレ、トイレ、リビング&キッチン&チャートテーブルが付いている。真水容量360リットルに燃料容量260リットルは申し分なく、バッテリーも船乗り的に使っている分には全く問題は無し。
シャワー用に20リットルの魔法瓶(?)が付いておりエンジンの熱でほぼ沸騰に使い状態まで沸かされている。イメージ的には5人が軽いシャワーを浴びるぐらいなら足りた位。
キッチンは2コンロにオーブン、また電源を挿せば電子レンジも使える構成。冷蔵庫は少し小さかったが、しかし昼ごはん用の食材等を冷やしておくには充分だ。これもエンジン稼動時にはフルで冷たくなります。
中はこんなかんじ。
http://www.bavaria-yachtbau.com/en/sailing-yachts/cruiser-40/images/inside-view.html
操船した感想としては、約20ノットの風にフルセールで挑んだ際(対風角60度)に最大船速8.5ノットとかなりの速度を記録、しかし Bavariaに共通して低速時の取り回しが特に悪い。特に後進時の舵の効き始めが遅く、スターン・トゥ(ポンツーンに対して後進で直角に侵入し、バウから碇を降ろし、船尾両舷から縄をポンツーンに渡すことで、船をポンツーンから数十センチ話した状態で前後を固定、停泊させる技術 ここ参照 http://www.distantshores.ca/boatblog/files/94807bd9ae73d4a40d5d8134d8e29930-29.html )の際に少し取り回しに難がありましたが、それ以外は非常に良い船。機走最大船速は6.5ノットに達し、有名メーカーらしい非常に安定した船体でした。
こんなかんじです。
(フェンダーが出てるとか機走だとかハッチが空いてるとか突っ込まないこと。もうすぐ到着なのです)
http://www.bavaria-yachtbau.com/en/sailing-yachts/cruiser-40/images/inside-view.html
ヨット&宿泊代 500 ユーロ
食事代(朝 EUR5、昼 EUR15、夜 EUR20) 280ユーロ
飛行機代(東京<>アテネ (トルコ航空)) 1200ユーロ
電車代(成田<>品川 往復) 80ユーロ(?)
バス代(アテネ空港<>バスターミナル 往復)6ユーロ
バス代(アテネ<>Lefkada(ヨットを借りる港)往復)30ユーロ
ガソリン代(ヨットなのでほとんど使わないが発電機として)60ユーロ
その他呑み代など予備費 200ユーロ
(注:ギリシャの港の大半は停泊料無料です。かかっても数ユーロ)
合計 2156 ユーロ = 244,311円(8月4日レート)
円高の恩恵をもろに受けているというのもありますが、一週間ヨーロッパを旅行したら幾ら位かかるかイメージの湧く人から見れば、全くもって現実的な価格ではないでしょうか。(ちなみに私のように英国にいてマイルが大量にあれば、1200ユーロの飛行機代がいらないので実際1000ユーロもかかっていない。。。)
結論:「海外セーリングは現実的な出費で可能」ということです。
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2。海外のセーリング怖くないの?何かあったらどうしよう?
これも二三十年前ならともかく、現代においてはそこまで心配する必要はないと言い切ってしまいたいと思います。
まずギリシャの海、特にこの季節はそれほど天気が荒れない、干満の差がゼロに近い(高低気圧の影響のほうが大きいw)、海流の流れもほぼ無い(海峡に少しある程度)。
風が吹けば高波の太平洋岸にお住いの皆様や、強い海流と複雑な地形で戦う瀬戸内海クルーザーの皆様から見れば、天国に等しい環境です。クロアチアの方はもう少し地形が複雑で風も強いのですが、特にイオニア海の場合は内海で遊んでいる限りはそれほど大きな心配をしなくて良いと思います。(夏場、特に7,8月のギリシャのイオニア海を想定してお話しています。季節、場所によっては荒れる事もありますのであしからず。。。)
さらに、この海域にはドイツやイギリスから隠居して船で暮しているセーラーや、夏の海を満喫しようと着ている観光セーラーが大量にいるので、まず各港に関する情報もすぐ手に入りますし、どの港もここはヨットオッケ、ここはダメというのを明確に示しており、「ルールさえ守れば」日本のように時には理不尽に港を占有する人達に怒られたりしません。
そして、何個もあるチャーターカンパニーのサポート体制。大小様々なヨットレンタル会社があり、どの会社も24時間の警戒態勢を取っているのが常です。彼らは30ノットは軽く出るようなRIBを保有しており、多少のトラブルなら2−3時間で駆けつけてくれます。というか錨を下ろすのに最適な場所だらけなのでトラブルがあればとりあえず止まって助けを呼べば大丈夫とも言えると思います。
もちろん、「大丈夫」というのは、日本の海で経験を積んだヨットマンを前提にお話していますので、少しでもヨットの具合が悪くなったらもう操船不可能というような人はちょっとやめたほうが良いと思います。というかそういう人が熟練の人の監督無しでヨットに泊まりがけで乗ってしまうこと自体が大間違いなのは日本でも同じだと思いますが。。
つまり、地中海、特にギリシャのイオニアの夏場はかなり穏やか、そして現地の人はセーラーに慣れており、一般的に言ってレンタル会社のサポート体制も充実していることから、日本で経験を積まれている方であれば、海自体にそれほど心配する必要がないということだと思います。
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3。どんなことが出来るの?
ギリシャでのセーリングが比較的メジャーになったことで、安全になった反面、入江を自分たちだけで占有するというのは難しい状況になってしまいました。しかし、それでも船じゃなければ簡単に行けないような入江に、快適な船室を持ち込んで寝泊まりすることが出来ます。そして街が恋しくなったら、もちろん都市の港に停泊してシティライフを満喫することも出来るでしょう。
今回は前半はほぼシングルハンド、後半も人の手も増えるも経験者は自分以外に前回イギリスで一回経験しただけのファーストメイトという構成。しかし最高の天気とほどほどの風に恵まれ、自分自身成長の機会になりましたし、そして何よりも参加者が口々に満足と言ってくれた最高の旅になりました。
いくつか写真を貼ります。話すより見せるということで。。。。
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4。二つの挑戦:英語&免許
さて、我々日本人がこのような特別な旅を実現するためには、少しばかりの困難があります。
まず、ひとつの課題は英語です。もちろん流暢に話せる必要はありませんが、特に漫画一の場合、無線で港または別の船、海上保安庁と英語で交信する必要があるということと、もちろんチャーター会社の人の船に関する説明を英語で理解して、不明点を英語で質問できるくらいの英会話能力は必要です。
おそらく、無線はもともと単語さえ知っていれば通じるはずですし、また船に関する説明は元々ほとんど分かっていることを英単語で彼らが話しているだけですので、熟練のヨットマンならそれほど困難はないのかも知れません。
言ってしまえば、六人のクルーのうち一人でも海外旅行を一人で出来る人がいれば大丈夫かもしれないです。(もちろん勇気と根気は必要ですが)
そしてもう一つが、免許の問題。解ったことは日本の小型船舶一級がまったく認知されていないという事実です。最低でもICC(International Certificate of Competence)という認定書があればギリシャであれば借りれる筈なのですが、少し前に調べた感じでは日本の免許でそれを発行できるという情報は発見できませんでした(ご存じの方は教えてください)。
じゃあどうするかということになるのですが、恐らく日本の小型船舶一級を持っていることをチャーター会社に伝えた上で、自分のスキルを説明する必要に迫られると思います。これはもうチャーター会社各自の判断なのでその後どのような交渉が必要になるのかさっぱりわかりませんが、少し調べた程度だと、一人以上の推薦状(ヨット経験を説明する推薦状)が必要だったり、実際に実地で口頭試問でスキルを試してから貸すというケースがあるようです(スキルが足りなそうだったらスキッパーを手配してそのスキッパーが同乗)。
この際、一番課題になるのが保険のようです。国際的に流通している認定証を持っていない場合、保険料が高くなったり、最悪保険が降りないというケースもあるようです。保険が降りなければアウト、スキッパーに同乗してもらうしかありません。
残念ながら、いくら経験があろうと、日本の小型船舶一級を持っているだけであると、かなり余計で複雑な手続きを経ないといけなくなるのが現実のようです。
ひとつの道としては、第一回目はRYAまたはそれに準じる組織が主催するセーリングスクールに通うことを目的にすることも出来ると思います。恐らくこちらの方が英語力に対する要求は高いですが、これでDay Skipper PracticalまたはCoastal SKipper Practical の実技の一週間のコースを修了できれば、今後ライセンスに関してギリシャで心配する必要はなくなります。(クロアチアやプーケットなどもう少し難しい海で借りるには私の取得したYacht Master Coastal 以上が必要になるようです。逆にいうとYacht Master Coastalまで取得すれば世界でヨットを借りれない場所はほぼ無いと断言できます。)
また、日本でもいくつかのセーリングスクールがこういった国際ライセンスを取得するツアーを開催しているようですので、それに参加すれば一部分は日本で受けて、一部分は海外で受けるというようなことも可能かと思います。(詳しくは知らないのでご存じの方は教えて下さい)
ただ、セーリングを人生の友にしても良いとお思いであれば、投資に見合った効果は得られると思います。自分の理解では、普通の海外旅行と変わらない値段で世界の海を航海することが出来るようになります。良い時代になりました。5年、10年スパンで努力を重ねていけば誰にでも必ず可能な事なのだと思います。
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5。結論「世界の海に生きる」
七つの海を航海するのに、自分のキャリアや家族を犠牲にする必要がない時代になりました。世界の綺麗な、そして安全な海の大半で、自分だけのヨットを気軽に借りることが出来る時代になろうとしています。少し一歩を踏み出せば、カリブ海、エーゲ海、イオニア海、プーケットやバリ、トルコ、南仏、世界のどの海に住むことも出来るようになりました。
昨年、そして今年の過酷なトレーニングで、やっと自分も自信を持ってこれらの海で航海することが出来るようになりました。真冬の凍えるような北海でタッキングを繰り返していたのが嘘のような天国、このために苦しい修行に耐えてきたとも言えます。
今回はギリシャでしたが、来年はおそらく父と一緒に南仏の海を航海したいと考えています。日本のセーラーの皆さん、もしお手伝いできることがあればお気軽にご連絡下さい。(いやほんとに)また、間違いのご指摘やご意見もお待ちしています。
2。海外のセーリング怖くないの?何かあったらどうしよう?
風が吹けば高波の太平洋岸にお住いの皆様や、強い海流と複雑な地形で戦う瀬戸内海クルーザーの皆様から見れば、天国に等しい環境です。クロアチアの方はもう少し地形が複雑で風も強いのですが、特にイオニア海の場合は内海で遊んでいる限りはそれほど大きな心配をしなくて良いと思います。(夏場、特に7,8月のギリシャのイオニア海を想定してお話しています。季節、場所によっては荒れる事もありますのであしからず。。。)
さらに、この海域にはドイツやイギリスから隠居して船で暮しているセーラーや、夏の海を満喫しようと着ている観光セーラーが大量にいるので、まず各港に関する情報もすぐ手に入りますし、どの港もここはヨットオッケ、ここはダメというのを明確に示しており、「ルールさえ守れば」日本のように時には理不尽に港を占有する人達に怒られたりしません。
3。どんなことが出来るの?
どこで碇を下ろそうか
街にするか。。。(右奥に自分の船が、、)
昼は賑やか、夜は静かなビーチでアンカリング
どこへ行ってもきれいな海(このヨットは別の人のヨットです)
写真では語り尽せない良い思い出が出来ました。。
4。二つの挑戦:英語&免許
まず、ひとつの課題は英語です。もちろん流暢に話せる必要はありませんが、特に漫画一の場合、無線で港または別の船、海上保安庁と英語で交信する必要があるということと、もちろんチャーター会社の人の船に関する説明を英語で理解して、不明点を英語で質問できるくらいの英会話能力は必要です。
おそらく、無線はもともと単語さえ知っていれば通じるはずですし、また船に関する説明は元々ほとんど分かっていることを英単語で彼らが話しているだけですので、熟練のヨットマンならそれほど困難はないのかも知れません。
言ってしまえば、六人のクルーのうち一人でも海外旅行を一人で出来る人がいれば大丈夫かもしれないです。(もちろん勇気と根気は必要ですが)
じゃあどうするかということになるのですが、恐らく日本の小型船舶一級を持っていることをチャーター会社に伝えた上で、自分のスキルを説明する必要に迫られると思います。これはもうチャーター会社各自の判断なのでその後どのような交渉が必要になるのかさっぱりわかりませんが、少し調べた程度だと、一人以上の推薦状(ヨット経験を説明する推薦状)が必要だったり、実際に実地で口頭試問でスキルを試してから貸すというケースがあるようです(スキルが足りなそうだったらスキッパーを手配してそのスキッパーが同乗)。
この際、一番課題になるのが保険のようです。国際的に流通している認定証を持っていない場合、保険料が高くなったり、最悪保険が降りないというケースもあるようです。保険が降りなければアウト、スキッパーに同乗してもらうしかありません。
残念ながら、いくら経験があろうと、日本の小型船舶一級を持っているだけであると、かなり余計で複雑な手続きを経ないといけなくなるのが現実のようです。
また、日本でもいくつかのセーリングスクールがこういった国際ライセンスを取得するツアーを開催しているようですので、それに参加すれば一部分は日本で受けて、一部分は海外で受けるというようなことも可能かと思います。(詳しくは知らないのでご存じの方は教えて下さい)
5。結論「世界の海に生きる」
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はじめまして、西田と申します。本日、このホームページに辿り着き、一気にヨット関連の記事を堪能させて頂きました。内容はKAZI誌よりも、遙かに読み応えがあると思います。特に、オックスフォード大学ヨット部での体験記は、書籍として読みたいほどの秀逸さでした。表面的なヨット留学体験記は目にしたことがありますが、こうした歴史ある大学のアカデミズムと一国の文化を交えた紹介記事は、余人をもって代え難い、貴重な資料です。続編を期待しております。
ご丁寧なご連絡ありがとうございます。そこまで言っていただけると、こうして書いている甲斐があるというものです。
今年も精力的にセーリングに取り組んでおり、全英大学対抗戦では7位の成績を収め、また来月はフランスで開催されるJ-boatの世界選手権のJ-Cupに出場予定、9月はまたサルデーニャ島でのセーリングも予定しています。
将来は自分もKazi誌に投稿できるように頑張りたいと思います!(笑)