きっと政治家や官僚の人達は本当はやってはいるのだろうけど、それがメディアからは伝わってこないので、政策、戦略を議論する際に重要だと思うステップと、現政権に対する感想をメモ書き程度に書きなぐっておきます。適当なので建設的な批判をお待ちしています。
さて、物事には順番がある。いきなり個別論に入っては仕方がないし、逆に個別論無くして全体観を語ることは出来ない。恐らく、少なくとも下記の四つのステップを踏んで初めて全体観のある、意味のある議論ができるのではないかと私は思う。
(0)将来予期される世界構造の変化と日本が置かれる状況を客観的に理解する
(1)日本国が取りうる国の方向性を議論し、有り得る選択肢を提示する
(2)個々の戦略的方向性に対応する具体的な政策体系を描き出す
(3)それを具体的に実行するためのhowの詳細を煮詰めていく
もちろん物事は動的に固まっていくもので、下記に4つのステップと書いたが、これらのステップは前後に行き来するし、このサイクルをぐるぐる回していくのが経営、または政治というものだというのは注意する必要がある。また、以下の例では一番上らへんの例を書いているが、このステップはあらゆるレベル、あらゆる場所で行われるべきステップである。
国家政策においては上記のような例であるが、例えば企業であれば以下のようになるだろう。
(0)将来予期される産業構造の変化と自社が置かれる状況を客観的に理解する
(1)自社が取りうる事業の方向性を議論し、有り得る選択肢を提示する
(2)個々の戦略的方向性に対応する具体的な事業計画を描き出す
(3)それを具体的に実行するためのhowの詳細を煮詰めていく
また、大学生が卒業後の進路に悩むなら、
(0)大学卒業時に自分が置かれる状況を客観的に理解する
(1)自分が取りうる卒業後の進路の可能性を議論し、有り得る選択肢を整理する
(2)個々の戦略的方向性に対応する具体的な行動計画を描き出す
(3)それを具体的に実行するためのhowの詳細を煮詰めていく
という形になる。
こうしてステップを明確にした上で、一つ一つのステップにおいて納得感のある理解をしていかなければ、物事は進まないし、具体的に実行している段階で混乱を生じる。一体どこが変わったのか、それが解らなければプランのどこを変えればいいのか解らない。それは実行策が悪いのか、戦略の方向性が悪いのか、それとも状況が変わったのか、それが整理できなくなるのである。
さて、、現在の政権はどのような状況だろうか。別に事情に明るいわけではないが、英国から見た部外者の外からの感想を書いてみる。そいつは違うと思う方は、ぜひ教えていただきたい。
(0)将来予期される世界構造の変化と日本が置かれる状況を客観的に理解する について
不明。情報が入ってこないので見えてこない。理解していると信じたいが、どの程度で理解をしているのか解らない。シェルのエネルギーシナリオぐらいのことは勿論やっていると信じたい。 ( http://www.shell.com/home/content/aboutshell/our_strategy/shell_global_scenarios/ または http://www.youtube.com/watch?v=jQ2uIPeiEYQ&feature=player_embedded )
例えば、日本であれば、客観的に見て、少子化がどのように進むのか、また高齢化がどのように進むのか、また政府負債がどのように悪化するのかなどのシナリオ分析をして、状況を「客観的」に理解する必要がある。この部分では客観的にというのが極めて重要になる。残念ながらこの状況分析の際にすでに、特定勢力の思惑により事実が歪められていたり、結論が曲げられていたりするケースが多く、そのために道路が大量に作られたり、空港が乱立したり、多くの問題が起きている。こういうことが起きないように、シナリオの策定過程はクリスタルクリアーにするべきだし、その策定に当たっては至極中立的な機関が行う必要があるのは当然であるのだが、」それが出来ているかは不明である。
(1)日本国が取りうる国の方向性を議論し、有り得る選択肢を提示する について
参議院選挙のマニフェストによると、
「わが国が抱える環境問題や少子高齢化など、喫緊の課題 への解決策。急速に成長するアジア、国内の 資源を活かせる観光分野などへの積極策。 これらが生み出す大きな需要に応えること で雇用を拡大します。そこから経済の拡大(強い経済)、財政の再建(強い財政)、社 会保障の充実(強い社会保障)という好循環をつくり出します。」
であるという。要は経済の拡大も、財政の再建も、優れた社会保障も全部出来ると言っている。何も犠牲にせずに、日本は望むものを全て実行出来ると言っている。もしこれが出来るのであれば、、、、反対するものはいないだろう。しかし、これにより(0)が本当に理解されているかどうかが怪しくなる。
(2)個々の戦略的方向性に対応する具体的な政策体系を描き出す
参議院選挙2010マニュフェスト( http://www.dpj.or.jp/policy/manifesto/ )を見て頂ければわかるが、これも全部実現出来れば誰も反対はしないだろう。言っていることは、法人税税率を引き下げ、EPA、FTAを積極的に推進し、規制改革を行い成長産業に投資することで、名目成長3%超を実現しながら、2020年までに基礎的財政収支を黒字化し、2021年度から長期債務残高の削減を開始する一方、公共交通を含む総合的な交通体系を構築し、高速道路を無料にし、自動車税負担を軽減し、食料自給率を向上させ、郵政民営化を阻止し、一票の格差を是正し、企業団体献金を禁止し、、、、とたしかに、(1)で選択したオプションを反映しているようには見える。無論、(1)で選択したオプションが八方美人であるのだから、これを作るのは難しくともなんとも無かっただろう。
(3)それを具体的に実行するためのhowの詳細を煮詰めていく
残念ながらhowの詳細を詰めれる人が全くいなかったとしか思えない。もちろん来年度予算を待ちたいが、「国の総予算の全面的な入れ替えをさらに徹底します」という実行力があるとはとても言えないのが現状であろう。
さて、、、このように(0)(1)(2)(3)を見てみると、以下のような感想に行き着く。
(0)について:(1)の総花主義を見るに、(0)が客観的なデータに基づいてしっかりとした分析が出来ているとはとても思えない。
(1)について:この「総花主義」は判断をほぼ放棄していると言えなくもないが、いちおビジョンと言えるものは持っているとは言える。
(2)について:個々の戦略は相反するように見えるものも多いが、(1)の総花主義が本当に実現できるのであればたしかに成り立たないとも言えなくもないので、(3)の能力に大いに依存する政策体系となっている。
(3)について:(1)で選択された戦略オプションが大変難しい挑戦的なものであり、(2)の具体案も無責任なほど言い放している反面、これまでの一年間では残念に思うことが多かった。(1)が余りにも難しい目標を掲げているので、(3)の一部、(例、無駄遣いの抑制)が失敗すれば全てを水泡に帰す戦略であるにもかかわらず、その意識が現場に浸透しておらず、また現場の能力が足りたい為随所にほころびが見え始めている。
では、現政権は何をするべきなのか?何が問題なのか。
第一に、現状認識が甘すぎる可能性が高い。(0)を緻密にやり直して、正確な状況把握をし直す必要がある。また第二に、自らの実行力を課題評価していた事実を客観的に認識し、自分たちに実行可能な、かつ(0)を反映した(1)に作り直す必要がある。そして第三に、作り直した(1)を元に(2)を描き直し、もう一回実現可能なレベルの(3)を考えてみる必要があるだろう。その上で第四に、何が優先課題になるのかをもう一度見直して、優先順位の高い項目から一つづつ片付けていく謙虚な姿勢が必要とされるだろう。
個人的には、遠回りに見えるかも知れないが、一票の格差の是正と参院の位置付けを修正し、衆議院の任期を1年か2年伸ばし、地方主権、文献を推進することで、国益に基づいた正確な民意が国会に到達し、それを元に国会議員が長期的な視座で判断できる土壌を確保することが先決であると思う。その上で、お金のかからない透明な選挙を実現し、世代間格差を是正し、歳出を適正レベルに引き下げ、規制改革により産業構造の転換につなげていく事が、長期的に日本にとってもっとも必要とされていることだと考えている。
無論、民主党の皆さんが慣れない中頑張っているのもわかる。中には素晴らしい方々がいるのもわかる。ただ、、、これでは世界有数の経済大国になってしまった複雑怪奇な国、日本をに輝きを取り戻すのは、将来の夢を見出すのは無理であると心から思う。
無念。。。